まめ知識

小さな体に大きなエネルギーを蓄えたリチウムイオン電池

 近年注目されているリチウムイオン電池。小型で軽量ながら、大容量・高出力という特徴があり、スマートフォンやノートパソコンなどの電子機器から電気自動車に至るまで、幅広い分野で使われています。従来の鉛蓄電池やニッケル水素電池に比べて高いエネルギー密度を持ち、同じ大きさでも多くの電気を蓄えることができるため、自動車のような大きなものも動かせます。
 リチウムイオン電池とは、電極にリチウムという金属元素を含んだ化合物を使った電池のこと。リチウムイオンが電極のあいだを行ったり来たりして放電と充電を行います。リチウムは全ての金属元素の中で最も軽く、高いエネルギー密度を持つので、小さくて軽く高出力の電池が作れるのです。

挿絵
 リチウムイオン電池は社会を大きく変えた技術のひとつといわれ、発明に携わった日本人の吉野彰さんを含む研究者3名は、2019年にノーベル化学賞を授与されました。モバイル機器の開発が活発になった1980年代、電池も小型・軽量で再充電可能なものが求められる中、研究開発が進められ、製品化へとつながりました。
 最近ではドローンや人工衛星にも搭載されているリチウムイオン電池。昔からある乾電池とは何が違うのでしょうか。両者を比較してみます。乾電池は「一次電池」と呼ばれ、一度使い切ると再利用できません。電圧は約1.5V、エネルギー密度は低く、重量はやや重く、液漏れが起こりやすいのが特徴です。これに対してリチウムイオン電池は「二次電池」と呼ばれ、数百回から数千回の充放電を繰り返すことができます。電圧は約3.6〜3.7V、エネルギー密度は高く、軽量で、液漏れが比較的起こりにくいという特徴があります。
 時計やリモコンなどの低電力製品には乾電池が適していますが、高出力・高効率が求められるスマートフォンのような現代機器にはリチウムイオン電池が不可欠です。またリチウムイオン電池には、自己放電が少ない(月に1〜5%程度)、環境への負荷が比較的少ない(鉛などの有害物質を含まない電池が多いため)などの特長があります。
 私たちの暮らしを便利にしてくれているリチウムイオン電池ですが、強い衝撃や高温環境、過充電・過放電に弱いという弱点もあります。さらに、これらが原因となって発火に至るケースがあるので、使う際には注意が必要です。発火の原因として一番に挙げられるのが、外部からの衝撃などで電池内部のセパレータ(絶縁膜)が破損することによる内部短絡(ショート)の発生です。その際、大量の電流が流れて局所的に発熱し、内部の電解液が反応して発火する可能性が高まります。またバッテリーの外に出ている正極と負極が直接触れ合うことで起こるショートも原因のひとつです。過充電・過放電状態でも発熱・発火する場合があります。製品情報をしっかり確認してから購入し、丁寧に使用することが大切です。
 また、廃棄物処理施設や収集運搬車両においても火災事故が頻発していますので、家庭用のごみとしてではなく、自治体の回収ルールを確認し守る、リサイクル協力を心掛けるなど、正しい捨て方を実行しましょう。