まめ知識

硫黄って実は身近なところにもある?!

 温泉のにおいの定番といえば、硫黄のにおいですね。「硫黄」(いおう)の語源は、「湯黄」(ゆおう)がなまって伝えられたといわれています。ちなみに英語名「Sulfer」の語源は、サンスクリット語で「火の元」を意味する「sulvere」とラテン語で「燃える石」を意味する「sulphurium」の2つの説があります。温泉のある火山地帯で産出される黄色い物質であることから、「湯」「黄」「火」「石」などが名称の根拠となっているのでしょう。ところで、温泉で特有のにおいを放つ硫黄ですが、硫黄そのものは無臭だということをご存知ですか?

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 硫黄は、酸素族元素の1つで、固形時は淡黄色で無味無臭です。卵が腐ったような温泉のにおいの元は主に、硫黄(S)と水素(H2)が化合した無機化合物である硫化水素(H2S)です。硫化水素は可燃性ガスで、天然のものは温泉(硫化水素泉=硫黄泉の硫化水素型)に含まれているほか、火山から火山ガスとしても放出されます。身の回りにあるものでは、独特のにおいがするタマネギ、ニンニク、ニラ、ラッキョウなどにも硫黄化合物が含まれています。さて、「硫黄のにおい」といわれながらも実際には無臭の元素、硫黄について、説明しましょう。

 元素記号S、原子番号16、原子量32.06の硫黄は非金属の黄色結晶で、自然界に広く存在しています。前出の火山や温泉、ニンニクなどにおいの強い野菜のほか、私たち人間の体の中にもあります。成人は、メチオニンやシステインなどのアミノ酸として、体内に約140gの硫黄が存在します。必須アミノ酸の1つであるメチオニンは、生理活性物質の生成や代謝に関わる性質があり、アレルギー症状などの原因となるヒスタミンの血中濃度を下げる働きや肝機能を助ける働きがあります。また、必須アミノ酸ではありませんが、メチオニンから体内で合成されているシステインには、肝機能を高めて解毒作用を促したり、しみやそばかすの原因となるメラニンの生成を抑える役割があります。

 硫黄は、農業や工業など、さまざまな分野で活用されています。農業では、殺菌作用を活かした殺菌・殺虫剤や、硫黄を燃やして発生する二酸化硫黄(亜硫酸ガス)を食材の防カビ・防虫剤、酸化防止剤として使用します。また硫黄は、植物を育てる際の肥料にもなります。硫黄を土に撒くと酸性土壌になるため、ブルーベリー、ツツジ、リンドウなど、酸性土壌を好む植物に向いています。特にブルーベリーをおいしく育てるために硫黄は欠かせません。

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 輪ゴムやゴム手袋、ボールなどのゴム製品が伸び縮みする特性も、硫黄のおかげです。生のゴムを伸ばすと伸びきって切れてしまいますが、ゴムに硫黄を加えて加熱することにより、硫黄がゴムの分子と分子を結びつけ、伸び縮みする特性が生まれます。そのほかマッチ棒の先にある赤や黒などの薬剤が塗布された部分や花火の原料、発煙筒、半導体のドライエッチング剤、写真プリント用紙の漂白、医薬中間品など、数え上げたらキリがないほど、硫黄は活用されています。最近のエネルギー分野では、リチウムイオン電池より大容量で長寿命な「リチウム硫黄電池」の研究開発が進められています。

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