元素記号He、原子番号2、原子量4.0026の「ヘリウム」は、周期表18族に属する貴ガス元素の1つです。1868年の皆既日食(太陽、月、地球が一直線に並び、月が完全に太陽を隠してしまう現象)で発見されました。名前の由来となった「Helios」はギリシャ語で「太陽」を意味します。

同族の貴ガス(ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン)の中で最も軽く、無色、無味、無臭、無刺激性で、重さは空気の約1/7。水素に次いで2番目に軽いガスです。完全に不活性で、他の元素と化合も反応もしません。物理・化学的に安定していて燃えにくいので、風船やアドバルーン、気球などを浮かせるガスとして使われています。軽さの点では水素が上ですが、水素は不安定な元素で酸素と結びつきやすく、酸素と水素を混ぜたものに点火すると爆発が起こってしまいます。水素もヘリウムも浮かび上がるという点では同じですが、安全なヘリウムが使われているのです。
また、ヘリウムは高温でも燃料や構造材との化学反応を起こすことがないので、原子炉の冷却材にも使われています。そのほか半導体や医療機器など、さまざまな分野で使われており、私たちの生活に欠かせない存在です。しかし、日本では全量を輸入に頼っており、近年では使用済みのヘリウムを回収し、再利用する取り組みにも注目が集まっています。
ところでこのヘリウム、パーティーグッズの声が変わるガスとして知られていると思います。このガスを吸ってからしゃべると、本人の声よりずっと高くておもしろい声に変わります。なぜでしょう?
それは、ヘリウムが音を伝える速さと関係しています。私たちが声を出すときは、まず肺から空気が出て、その空気が喉にある声帯を震わせて音波になります。そしてこの音波が声道という空間で共鳴して、音になるのです。一般に、音の速さは、伝わる気体の種類によって異なり、軽いほど速くなります。
ヘリウムはとても小さくて軽い分子なので、音を空気の約3倍の速さで伝えます。音が速く伝わることで、声道で共鳴する音が高くなり、高い声になって聞こえるのです。

(注)パーティーグッズの声が変わるガスはヘリウムと酸素の混合ガスですが、風船を膨らませるヘリウムは純度が高いため、直接吸い込むと酸欠、窒息の危険があります。
