まめ知識

カイロはどうして温まる?

 寒くなるとお世話になる使い捨てカイロ。手軽に使えて便利な冬の必需品ですが、その仕組みには、私たち生物が生きていくうえで欠かせない元素、酸素が大きく関係しています。
酸素は、元素記号0、原子番号8、原子量16.0、地球上に最も多く存在する元素です。無色・無味・無臭の気体で、空気の約21%を占めています。化学的にはきわめて活性が高く、他のものを酸化する(燃やす)力が強く、多くの元素と化合します。空気よりもわずかに重く、水にはわずかしか溶けませんが、魚などはこのわずかにとけた水中の酸素をとり入れて生命を維持しています。燃やしたり酸化させたりする性質を利用して、鉄鋼業などで炉の吹き込みに使われるほか、鋼材の溶接・切断に、化学分野での酸化反応工程などにも使用されます。また、医療分野での酸素吸入、環境対策のための排水処理、ロケットの推進剤など、幅広い分野で使われています。 

 使い捨てカイロは、材料に含まれている鉄粉が酸化反応を起こしたときに発生する熱を利用して温かくなります。つまり、鉄が空気中の酸素と反応して酸化するとき(酸化鉄になるとき)に発生する熱を利用しているわけです。酸化鉄とは錆びた鉄のことですが、空気中に放置していて真っ赤に錆びてしまった鉄を触っても、熱くはありません。でもカイロは温かいのは、なぜでしょう?
 それは、化学反応のスピードと関係があります。化学反応が起こるときには熱の発生や吸収が起こるのですが、鉄の酸化反応は遅いので、例えば公園にある遊具の錆びた鉄から熱を感じることはできません。一方、使い捨てカイロの場合は、鉄粉が酸化反応を起こすスピードが速くなるため、熱を発生します。その理由は、原材料の中に鉄粉と一緒に鉄の酸化反応を早めるものが入っているからです。

酸化反応画像
カイロ画像

 一般に、使い捨てカイロの原材料は、鉄粉、活性炭、保水材(バーミキュライト、木粉、吸水性樹脂)、水、塩類です。表面に小さな孔が開いている活性炭には吸着する働きがあるので、空気中の酸素を取り込んで酸素濃度を高め、鉄の酸化を促進します。
 水や塩類には鉄分の酸化を早める働きがあり、バーミキュライトなどの保水剤には、隙間に水を蓄えて鉄粉に少しずつ水分を供給する役割があります。さらに、これらの材料が入っている袋は不織布でできているため、空気を通し、鉄を酸化しやすくします。このように、使い捨てカイロの中には鉄の酸化を早めるチームが結成されているので、袋を開けた途端、瞬時に温かくなるのです。