元素記号N、原子番号7、原子量14.0の非金属元素「窒素」は、無色、無味、無臭で、化学的に他の物質と反応しにくい不活性ガスです。現在の地球の大気には窒素が約78%、酸素が約21%、その他の成分が約1%含まれていますが、地球ができたころの主成分は二酸化炭素だったと考えられています。長い歴史の中で、二酸化炭素など他の成分が減っていきましたが、窒素は安定した気体で、一度できるとほとんど変化しないため、大気中に一番多く含まれる成分になりました。
さて、この窒素ですが、パリッとした食感が魅力のポテトチップスの袋の中にも入っています。その理由は、商品の袋の中に酸素を含む空気が入っていると、ポテトチップスの油が酸化して、味や臭いが変わってしまうからです。


油の酸化とは、油が空気中の酸素と反応して変化する化学反応のことで、不快な臭いを発生させたり、品質を低下させたりします。酸化した油を食べると、味が美味しくないだけでなく、最悪の場合には吐き気や腹痛を引き起こすなど、健康被害にもつながる可能性があります。袋の中を窒素に置換することにより、油の酸化を防ぎ、ポテトチップスの味や臭いを守って美味しさを保っているのです。さらに窒素で袋を膨らませることで、薄くて壊れやすいポテトチップスの形状も守ってくれています。窒素はポテトチップスをはじめスナック菓子のサクサク食感ときれいな形を保つ役目をしています。
また窒素は、液体窒素にすることで、食品の冷凍保存にも使われています。液体窒素冷凍という凍結法で、超低温で気体となった液体窒素を食品に吹き付けて、食品を急速に冷凍させる方法です。ほかの冷凍法と比べて非常に短時間で冷凍できるので、食品組織へのダメージが少なくなります。
今回紹介したこと以外にも、大気中に存在する窒素は、不活性な性質を生かし、多くの産業で利用されています。たとえば消火設備。これは、窒素ガスを放出することで室内の酸素濃度を下げ、その窒息効果によって消火する設備です。また窒素は植物の生育に不可欠な養分でもあるので、農作物の肥料にも使われています。そのほか断熱材、食品梱包材、自動車や飛行機などの内燃機関にも使用されています。大気中に存在する窒素は私たちの生活に欠かせない重要な元素なのです。
