まめ知識

ステーキが美味しい理由はメイラード反応にあった!

 ステーキなどのお肉を焼くと、こんがりとした美味しそうな焼き色がつきます。思わず食欲がかき立てられるこの焼き色には、メイラード反応と呼ばれる化学反応が関係しています。メイラード反応とは、食材の細胞内に含まれている糖とアミノ酸などが、加熱することによって流れ出て結合し、反応し合い、メラノイジンと呼ばれる褐色の物質を生み出す反応のことです。褐変反応とも呼ばれています。20世紀、フランスの化学者ルイ=カミール・マヤール(メイラード)が、この反応についての詳細な研究を行ったことから名付けられました。
 メイラード反応が起こると、食材に焼き色がつくだけではなく、その風味も変化します。肉を構成している成分が加熱によって反応し、ピラジン類やフラン類、ラクトン類などさまざまな香気成分が生成され、ステーキ特有の香ばしい風味(ミートクッキングフレーバー)を形成します。香気成分の中でも特にナッツやローストした香りのもととなる物質、ピラジン類が強い風味をもたらしています。厚さ2センチ以上の厚切りステーキを切ってみると、中心は赤みを帯びたレアの状態ですが、表面はカリッと香ばしく焼けています。肉全体についた焼き目が、肉の表面に肉汁が流れ出ないようコーティングの役割を果たし、旨みがぎゅっと閉じ込められるという効果もあります。

肉

 メイラード反応によって生み出されるメラノイジンは、食品を美味しくするだけでなく、優れた抗酸化作用を持つことでも知られています。日本人の食生活に古くから関わってきた味噌やしょうゆもメイラード反応を利用した発酵食品で、腸内環境を整える働きがあるといわれています。また、メイラード反応は、クッキーやパンなどの小麦粉製品にも起こります。小麦粉は、そのままでは白く、香りはありませんが、砂糖と混ぜ合わせた種を180℃で加熱すると、できあがったクッキーやパンには褐色の焼き色と香ばしい風味がつきます。これは小麦粉に含まれる「フェニルアラニン」などのアミノ酸と糖が反応するためです。

 メイラード反応とは、アミノ酸と糖が一緒に加熱されることで、新しい分子が生まれる反応です。砂糖に限らず、ブドウ糖(グルコース)や果糖など、アミノ酸と反応する糖であれば、メイラード反応は起こります。肉じゃが、すき焼き、ご飯のおこげ、トーストなど、身近な料理にも同じ反応が起こっています。キャンプで人気の焼きマシュマロが茶色くなるのも、メイラード反応のおかげです。色だけではなく、味も香りも食感も変わりますよ。