まめ知識

宇宙にも匂いがある!

 宇宙とは、真っ暗で、何も見えず、何も聞こえない、暗黒の世界のイメージがありますね。宇宙が暗くて音も聞こえないのは、そこがほとんど真空だからです。真空の場所では太陽光は通過するだけで、周囲を明るく照らすことはありません。また、物質がほとんどない真空の宇宙では、振動を伝えるものが何もないので、音も聞こえないのです。そして、真空の宇宙では、香りを感じることもできません。香りを感じるためには香りの元となる分子を嗅覚細胞で検知する必要があるからです。

宇宙画像

 しかし、なんと「宇宙には匂いがある」という宇宙飛行士からの証言がたくさんあるのです。その匂いとは、焦げたラズベリーのような匂いだったとか。過去に船外活動を終えた宇宙飛行士がエアロック内に戻ってきたときに、「宇宙服から宇宙の匂いがした」という報告が出ています。「オゾン臭に似ているが、独特の香りだ」という報告ですが、数秒間だけしか体験できないため、その理由はよくわかっていません。ちなみにオゾン臭とは、酸素分子(O2)が電気的な作用などによってオゾン(O3)に変化した際に発生する匂いのことで、高原や森林の空気の匂いなどと表現されています。オゾン発生器の使用中やコピー機の近くで感じることもあります。また、宇宙服に付着していた「焦げたラズベリーのような匂い」の正体は、星間分子である「ギ酸エチル」という有機化合物だと考えられています。天然のものではパイナップルやラズベリーなどのフルーツ類に多く含まれる甘酸っぱい香り、ラム酒や日本酒の古酒などに含まれている芳醇な香りもそうです。暗黒の宇宙が芳しい香りで満ちているとしたら、なんともロマンチックですね。

 宇宙空間には、原子や素粒子だけではなく、星間分子と呼ばれる化学種が存在しています。人類はこれまでに200種類以上の星間分子を発見し、大きいものではベンゼンやシアノナフタレン、フラーレンなどもあるそうです。望遠鏡の技術が発達して宇宙にある物質を観測できるようになってきたおかげで、宇宙空間に存在、発生するさまざまな分子があることがわかってきたのです。

 さいごに、私たちの体を作っている炭素や窒素、酸素などの元素は、宇宙が生まれたときにはなかったもので、寿命を迎えた恒星が最期の段階で超新星爆発を起こしたときに放出したものと考えられています。死んだ星がばらまいた元素が私たちの体の素にもなっているのですね。